もうすぐ2010年のF1シーズンが開幕します。 そこで今回はF1用のスパークプラグのお話。一番上の写真は左端の長いプラグを除いて50年代末から現在に至るおもなF1プラグを年代順に並べたものです。左から2番目がコベントリークライマックス1.5L、2バルブ用、次がDFVからターボの初期に広く使われたレーシングプラグの定番、名作G54V(このプラグはカタログモデルとして市販されたので誰でも手に入れることが出来ます)、その横の長いのがターボ時代の末期、右から3番目は比較的最近のNA用でネジ径が8mmになってから、右端2本はそれをさらに小型化したものでレンチのかかる部分が6角ではなくもっと突起の少ない形状になっています。さすがにこのあたりになるとまだ“時効”と言うには早すぎるのでエンジン名はご勘弁ください。 こうして見ていくとプラグ開発の歴史は小型化の歴史であったことが分かります。 プラグ屋からみればネジ径は大きいほど作りやすいのですが一方エンジン屋からみれば何とかしてバルブ面積を大きく取りたい、そのためにプラグは出来るだけ小さいほうが良い、出来れば無いに越したことはーーーとなるわけです。戦前は18mm径が標準だったのですが戦後それが14mmとなりコベントリークライマックスの4バルブ化と共に10mmプラグがレーシングプラグの標準となってゆきます。ちなみにその頃はまだ接地電極があった
のですが(2枚目の写真の左側、奥に引っ込んでいますが接地電極自体は存在します)DFVが70年代になってCDI化された時接地電極の無いいわゆる沿面プラグ(2枚目写真の右側)が開発され今日に至るまでレース用プラグの定番となっています。 3枚目の写真は10mmプラグとその後に登場した8mmプラグです。最初に8mmプラグをトライしたのは楕円形ピストンで有名なホンダの4サイクルGPレーサーNR500だったと思います。F1プラグが8mm化されるはるか以前の話です。 その後さらに小型化を追い求めて(大きな写真でお見せ出来ないのがつらいのですが)上の写真の右2本のような形状になっていく訳です。
さてそれでは1枚目の写真の左端の長ーいプラグはどのエンジンに使われたものでしょうか? これがノーヒントですぐお判りになる方はグランプリエンジンの大権威と思います(今までこれらのプラグコレクションを見ていただいた方でお一人だけおられました)
ぜひ想像をめぐらしてみてください。
今週、グランプリフォトグラファーの原富治雄さんの写真展を見に行き少しお話をさせていただくチャンスがありました。 彼曰く、今のグランプリはもう以前の人間味が一杯のグランプリではなくなってしまったーーー。 私も同感です。個性豊かな天才たちがマシーン作りにアイデアを競い、これまた個性豊かな名優が神業とも思えるテクニックで乗りこなした時代、それをこの目で見てきた私たちは本当にいい時代に生まれたんだなーとまたまた思ってしまいました。
左端のプラグを使ったGPエンジンの答えは次回にでも